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うちの子落ち着きが無い、、、大人になったら治る?

Q:3歳の男の子の母親です。

うちの子供は少し落ち着きが無いようで、ちょこちょこ動きまわり、いつも体の何処かを動かしています。
年とともに治るのでしょうか?また、どのようにしつければいいのでしょうか?

A:脳が発達過程にある子供というのは、落ち着きがなく、ちょこちょこ動き回るものです。
ですから、ご質問のお子さんのように、まだ3歳ですと、一般にいう ”やんちゃな盛り” ですから、もう少し大きくなるまで様子を見てもいいのではないでしょうか。


他の子供に比べて動きがとても多い子供を多動児といいます。
一般に男の子と女の子を比べると、男の子のほうが圧倒的に、多動児の子供が多いようです。
これは悪いことばかりではありません。多動児の子供というのは、ひっくり返して考えれば、好奇心が強く、積極的で行動力があるということです。
むしろ、将来とても伸びるお子さんなのではないでしょうか。子供はもともと好奇心の塊ですし、元気に動き回るようにできているのですから、動きたいならある程度動かしてあげることが大切です。

視覚認知の高い男の子に、多動児が多い

一般に、男の子では視覚認知が、女の子では言語認知が高いと言われています。
視覚認知と言うのは、、目で見たものを理解したり判断したりする力ですが、この反応がとても早く、同時に強い傾向があると、何かをしていても他のものがすぐ目に入るため、そちらに気持ちがむいてしまって、集中できないということがあります。


また、お子さんが小学生で、成績表に落ち着きが無いというようなことが書かれていて心配だというお母さんもいらっしゃると思いますが、ご自身の小学校の頃を思い出してみてください。
一時間の授業に耐えられず、途中で教室を出て行ったり、教室を出ないとしても消しゴムをしょっちゅういじってみたり、また体の一部を動かしていたりといいう同級生はいませんでしたか。


昔は、1クラスの人数が多いために、先生も目が届かないことがありましたが、最近では、少子化で人クラスの人数が減っているため、生徒一人一人の行動に先生が過剰に反応し、正常な範囲のお子さんに対して多動児というように思うこともあるかもしれません。
得に、先生はなんとなく落ち着きがなく、扱い難い子をそのように判断するかもしれません。

ご両親とのコミニュケーションが大切!

このような子供は時として、本人が持っている欲求とご両親が与えている関わりが、ずれていることがあります。
こうしてもらうほうが楽しいとか嬉しいという意思がきちんとあるのに、ご両親からはいつも何かを押し付けられたり強制されたり、また逆に放って置かれたりすると、注意引き行動という形で、わざと何かをやってみる場合もあります。


いけないと言われていることをわざとやるというのは、いつも何かをご両親に事細かに命令されたり無視されたりしているけれども、いたずらをしたり注意をひくような行動を取るとご両親が相手にしてくれる、自分の方を向いてくれるから、ついついそういうパターンに出てしまうと考えられます。


これは、幼稚園や学校の先生に対しても同じことがいえます。
このような場合、関わり方として大切なことは、少しでも良いことをお子さんに見つけた時に、ご両親が出来るだけ言葉をかけてあげることです。そして、お子さんの要求に合わせて少し遊んであげるのもいいでしょう。


逆にいたずらをした時には怒らないで無視をする。そういうふうにしていると、だんだんと治まるものです。
これで治まるような、多動児の範囲には入りません。

多動児も薬で治療ができます。

しかし、多動児な子供の中には、
多動児と思われても改善できる場合と、病的な行動(注意欠陥・多動性障害)な行動が続くものがありますので、見極めをする必要があります。


知能指数が高いのに、学業成績が上がらないような子供はLD(学習障害)と呼ばれます。
エジソンもアインシュタインもLDだったと言われています。


このような場合、学業成績が上がらないのは、先生の話を聞けないからです。
一対一で教えれば聞けるし、わかるけれども集団の中での学習が苦手なのですLDのお子さんは、苦手な分野がそれぞれ異なりますが、周りの音から自分が聞くべき音を選び出して聞き取るのが苦手だったり、見たものを判断するのが苦手だったり、忘れやすかったりします。


ご両親も、ご自分がとっても緊張する状況に置かれた時、周りからの合図がいっさいわからなくなり立ち往生したというような経験がありませんか?
肩に手を当てたりしながら視線を合わせてゆっくり話せばわかるのです。
一般には、覚醒レベルが上がると興奮し、落ち着きがなくなると思われがちですが、そればかりではありません。
ご両親も眠くなると注意力が散漫になり、集中力がおちるということを経験しておられるでしょう。


多動児のお子さんの場合には逆に、覚醒レベルを上げるような薬を服用し、落ち着かせるわけです。
この精神を刺激する薬は保険を使えますし、後遺症が出るようなものでもありません。


また、薬を服用することが全てではありません。家庭においては、お子さんが集中して何かをしている時に全く違ったことで声をかけたり、本人が興味のないことを無理にやらせたりすることはやめてください。


一方、こういうお子さんの中には、以前話題になったこともありますが、微細脳障害びさいのうしょうがい(微細脳機能障害)として少し不器用なお子さんもいます。


これは普通に神経学的な検査をしても異常がないのに、細かい動作ができなというものです。
例えば、通常、7歳未満だと片手である運動をさせると、もう片方の手も動いてしまいますが、それ以上の年齢になるともう片方の手は動きません。それが微細脳障害のばあい、片手を動かすと反対の手も動いてしまうのです。


大きく動くことがなくても、少しだけ動くということもあります。年齢とともに治るものですが、一度病院を訪れて、診察をうけるのもいいでしょう。

お母さんの愛情がAくんの落ち着きを取り戻した。

落ち着きが無いということで、子供を連れて診察に見える方はいらっしゃいます。
患者さんの中には、家庭環境が原因だったというケースがたくさんあります。


そのようなばあいには前述のように、日常生活における、ご両親からお子さんに対する関わり方を変えてもらうようにしますが、その後とても落ち着きが出てきたり、お母さんの言うことをよく聞くようになったというお話がかなりあります。
その例として、五歳のAくんの場合を紹介しましょう。


診察にて医師とおはなししているときにも実際にいすに座っていることができず、机の上にある医療器具をいじりまわしました。
しきりに話しかけたりポケットの中の物を探ったっ理していました。


その間、お母さんは「あれしちゃダメ、これしちゃダメ」と子供の行動を征するのに忙しく、とても医師の話など聞いていられない状態でした。
そこで、医師が、子供に紙と鉛筆を与え、「好きなを掻いてごらん」というと、子供はそこに怪獣の絵を書き始めました。
一つ一つ「これはなあに?」と尋ねると、得意気に説明してくれます。
その後、彼の応対は看護師に任されお母さんから話を聞いたのでした。


彼は保育園に通っており、お母さんは外で仕事をしていて忙しい毎日。
子供を迎えに行って家に帰っても、夕食の支度やその他の家事で大忙し。
お子さんの言うことに耳を傾けたりする余裕は殆ど無く、ずっと怒なりっぱなしとのことでした。


お母さん自身は、教育のレベルも高く、ご自分の家事に対する基準がキビしいようです。それでであれもこれもと思ううちについ、お子さんを叱ってしまったり、なにか言ってきても上の空になって、いい加減な対応をしてしまっていたようです。
そこで、医師は次のよう話をしました。


1,現在のお子さんの落ち着きの無さは、欲求不満の要素がかなり含まれていること。
2,我々親は一般に、自分が子供に言いたいことだけを言って、つまり、禁止事項をたくさん言って、でも褒めることをサボってしまう傾向があり、特にご自分の基準とするレベルが高く、お行儀の良い子に育てたいと思っていると、それが強く出てしまうということ。


3,発達期の子供にとって大切なことは、その時に、自分が興味を持ったことや、感動したことをご両親が認めて共感してあげること。
4,困ったいたずらをした時にはできるだけ無視して、少しでも頑張ったら、満面に笑みをたたえて抱きしめたり、頬ずりしたりしてほめてあげること。


家事をきちんとこなすことも大事ですが、それよりも、「今はとにかくお子さんと遊ぶことが一番大切であり、できあいのおかずを買ってきても、家の中が多少散らかっていても、問題はないと思う」と言われたのです。


一ヶ月後、再び受診した時にはAくんはニコニコしながら大きな声で挨拶をして入室し、診察室でもじっとしていることができるようになっていました。お母さんは、医師が申し上げたことを守り、お母さん自身も以前に比べて、毎日がとても楽になったとお話しておられたようです。

落ち着きのない子供は将来有望?

私達大人でも、自分が感動したことや、頑張ったこと、その成果を誰かに認めてもらいたいという気持ちがあると思います。
子供も同じで、人生の基礎作りの時期に周囲の人に見守られ、認めてもらい、それらの過程を通して、成長していくことができるのです。


多動は原則的には成長とともに薄れていくものです。私の知り合いの中にも、小学生の頃は椅子にくくりつけられていたのに、今は優秀なお医者さんになったという人もいます。


その人は今でも行動的で積極的。
先ほど行った将来有望、の良い例だったと思いますが、そういう風に、うちの子供は将来有望かもしれないと思って、ゆとりある心を持って、子どもと関わることが大切なのです。