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感染症と予防接種の概要


幼稚園から小学校にかかけて、最も多くの子供が経験する病気が風邪、急性咽頭扁桃、水疱瘡、麻しん(はしか)や風疹、おたふくかぜではないでしょうか。


これらを総称して感染症といいます。
感染症はウイルス、細菌、その他の病原微生物、また寄生虫などが体の中に侵入して起こります。
伝染らないものもありますが、多くのものが人から人へ伝染るものです。


そして、初めて集団の中に入る幼稚園から小学校にかけてはウイルスによる感染症が最も多く、風邪、麻疹、風疹、水疱瘡があります。
子供の感染症は、生後6ヶ月くらいまではほとんど起こりません。
それは、母体から受け継いた免疫力がまだ残っているためです。生後6ヶ月ころにはその免疫力も衰え始め、突発性発疹とっぱつせいほっしんを始めに感染症にかかるようになります。


幼稚園や保育園にかよい始める頃になると、多くの子供達や大人と接する時間が増えて感染症のウイルスなどを伝染される可能性が高くなり、感染症にかかるピーク期になります。


しかし、感染症はかならずしも子供だけがかかるものではなく、ご存知のお母さんも多いと思いますが、おとなになってからかかるとその症状も重く、また以外な後遺症を残すことにもなりかねません。


そういう意味では子供のうちにかかったほうが症状は軽くて済みますし、また麻疹や風疹、おたふくかぜなどのように、一度かかると免疫ができて二度とからなくなるものもあるので、幼児期の一過性の病気と考えて、それほど深刻になることもないでしょう。

感染症と予防接種の治療

それぞれの感染症によって治療法は異なりますので、症状が見られたら、必ず病院を訪れ、的確な治療を受けてください。

予防

感染症では、一時的な免疫ができるものもありますし、免疫ができないものあります。
そして症状が重くなったり、その病気が元でさらに重大な病気を併発してしまうものもありますので、そのような感染症に対しては予防を心がける必要があります。そのひとつが予防接種です。


平成6年から予防接種の制度が変わり、それまでは予防接種が義務付けられていましたが、その後は【受けるように努めなければならない】勧奨接種と改められました。


だから受けなくてもいいというのではなく、前述したように、重大な病気を併発するものもありますので、積極的に予防接種を受け、子供の健康をまもることが大切です。


予防接種には、結核予防法で定められているBCGを含み、予防接種法のもとに国で定めた定期接種と、希望者が受ける任意接種があります。


定期接種にはDPT(ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合)、ポリオ、麻しん、風疹、日本脳炎などがあり、それぞれ接種の時期になると、出生届を元にした対象者にその通知が届きます。その費用は自治体によっては一分事故負担が必要なところもありますが、原則的には無料です。


いくつかある予防接種の中でも保健所や学校で行われる集団接種と、近くの病院などで個別に受ける個別接種があります。
予防接種の種類で異なりますので、接種の時期が近づいたら、通知書のほか各市町村の広報誌や保健だよりを気をつけて見るようにしましょう。

定期接種とその感染症

BCG

BCGは結核予防法という法律で定められており、結核を防ぐための予防接種です。
結核は昭和10〜25年までの死因一位を占めていましたが、平成8年には22位と大幅に減少しました。


しかし、その頻度は10万人に2,3人と先進国の中では高率です。
また年齢別では、特に70歳以上の方の結核による死亡率が高い傾向にあります。
また0〜4歳で結核にかかっている子供は、平成8年には10万人に2,2人と成人の10分の一ですが、5〜15歳でかかっている人の割合の約2倍です。


結核は、かかってもあまりはっきりした症状が出ないまま過ぎることが多く、気づいた時には病状が進んでいるということがあります。怖いのは髄膜炎ですが、微熱や体重が増えないなどの症状のみで経過し、痙攣、意識障害が出て髄膜炎に気づいた時にはかなり重症になっていたりすることもあるため、初回のBCGはできるだけ速く受けておきましょう。


BCGの接種をする前には、まずツベルクリン反応検査を行います。
誰でも経験したことがあると思おいますが、その二日後、赤い反応が出なければ陰性でBCG接種をします。
9mm以上の赤い反応が出れば陽性で、過去にBCGを受けていなくて陽性と診断された場合は欠格にかかっている可能性があるため、精密検査を受けることになります。


BCGの接種はスタンプ式のもので、上腕の二箇所に押し付けて接種します。
接種後、1,2ヶ月して赤いかさぶたの状態になると正常反応ですし、数ヶ月間、脇の下のリンパ節が腫れることがあります。


これは自然に消えますが、大きかったり赤かったり心配でしたら小児科で受診してください。
接種時期は何度かあります。最初は生後3ヶ月から48ヶ月までの間で、この場合には集団と個別といずれのケースでも接種することが可能です。
二回目は小学校一年生、三回目は中学校一年生で、いずれも集団接種になり、学校で実施されます。
二回目、三回目におけるBCG接種者に対しては、翌年もう一度検査を行います。

DPT(ジフテリア、百日咳、破傷風)

ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合のことをDPTといいます。
DPTは一回の接種では終わらず、まず合計四回の接種を受けます。


その時期は生後3ヶ月以降で、一回目から三回目は約1〜2ヶ月(3〜8週)の間隔を開けて三回接種。
そして三回目から約1〜1年半後に四回めを接種します。
その後11〜12歳で追加接種をします。


破傷風やジフテリアの罹病りびょう(病気にかかること)は、現在の日本ではほとんど聞くことがありませんが、百日咳は、現在でもかかる子供も多く、また年齢が低いほど症状が重いものです。DPTは個別接種のため、通知が来なくても適切な時期になったら接種を受けるという心がけが大切です。

ポリオ

ポリオは小児麻痺とも言われ、ウイルスによる感染症で、風邪と似たような症状ですが、高熱が出て下がったなと思ったら、突然手足が麻痺してしまう病気です。


以前は流行したこともありましたが、陽性では予防接種により日本では撲滅状態にあります。
ポリオは他の予防接種とは異なり、注射ではなく生ワクチンを飲むという方法で行います。


一回では効果がない場合もあるので、二回の投与が必要です。
ポリオの投与時期は生後3〜90ヶ月の間で、集団接種で行います。


一回目から6週間以上の間隔をおいて、二回目を投与します。副作用等はほとんどありませんが、ポリオは腸から感染するウイルスなので、下痢をしている時には接種を避けましょう。接種対象期間が長いため、他の予防接種と時期が重なったばあいにはDPTや麻疹などの予防接種を優先させても問題ありません。


麻しん(はしか)

麻しんは伝染力の強い感染症です。
主な症状は10〜12日程度の潜伏期間の後に、咳や鼻水、目やにを伴った発熱が3日間位続き、熱が少し下がったかなと思ったその後にまた高熱が出て、それと同時に首の後ろと顔から発疹が現れます。


生後6ヶ月まではお母さんがかかったことがあれば、免疫があるためかかりません。
また免疫があるうちに接種しても抗体がうまくできないため、接種時期は生後12〜90ヶ月の間ですが、2歳までに受けるのが標準的で、個別接種で行います。12ヶ月以降できるだけ速く受けることをおすすめします。

風疹

約2〜3週間の潜伏期間の後、全身の発疹と発熱を伴う症状が現れます。
殆どの人は軽い症状ですみますが、まれに関節炎、脳炎、血小板減少性紫斑病けっしょうばんげんしょうせいしはんびょうを引き起こすこともあります。


妊娠中の女性がかかると生まれた赤ちゃんに心臓病、難聴など先天性風疹症候群が起こる可能性もあります。
妊娠中の赤ちゃんが先天性風疹症候群になるのを防ぐため、上のお子さんが風疹にかかった時に、お母さんが妊娠中というケースを考えて、12歳の時にも予防接種が行われています。


予防接種は個別接種で生後12〜90ヶ月までの間に受けますが、麻疹の予防接種後、だいたい12〜36ヶ月までの間に受けるのが標準的です。
この時期に接種できなかった人は、集団接種で小学1年生の時、またこの時に設けられないばあいには同じく集団で中学1年生で接種します。


日本脳炎

これもまたウイルスによる感染症ですが、コガタアカイエ蚊という蚊が媒介する病気です。
約1〜2週間程度の潜伏期間の後、40度以上の高熱や頭痛、意識障害などが症状として見られます。


また、発症数はそれほどありませんが、死亡や重度の後遺症が残ることも少なくありません。
殆どが関東以南の一定エリアで発症し、全国的な流行というよりも地域的に流行する傾向が見られます。
予防接種は3〜4歳で個別に行われます。
最初の年に1〜4週間の間隔で二回接種し、翌年追加で一回接種します。
以降、集団で小学校4年生、中学校3年生まで行います。

その他の予防接種とその病気

定期接種の他、任意で行える予防接種にはインフルエンザ、おたふくかぜ、水疱瘡(水痘)などがあります。
この中でインフルエンザは重症の風邪ですが、毎年流行する方が異なります。
そのため、基本的には3歳ころから接種することはできますが、その年の方に合わせて毎年接種することが必要になります。


おたふくかぜ

ウイルスによって起こる「流行性耳下腺炎りゅうこうせいじかせんえん」のことですが、約2〜3週間の潜伏期間ののち、頬から耳の下あたりが腫れるものです。


子供は喉や耳のあたりを痛がります。
かかっている時には唾液の分泌で痛みが増すので、食事は薄味のものが良いでしょう。


発熱を伴う場合とそうでない場合がありますし、片耳の下だけが腫れるということもあります。
完治するまでは約1〜2週間程度の時間を要します。
幼児の早い時期にかかることは殆どないため、接種の時期は2〜3歳頃が適当です。
接種の副作用として髄膜炎が問題になったことがありましたが、今は改善されています。


水疱瘡

水疱瘡みずぼうそうは、2〜3週間の潜伏期間の後、小さな虫刺されの後のような、周りがやや赤く、真ん中が盛り上がっている発疹がまず胸やお腹などから始まり、頭を含む体全体に出てきます。


真ん中の盛り上がりが水を持ち、次々と黒いかさぶたになって2週間程度で完治します。
発熱を伴う場合とそうでない場合がありますが、症状が重くなり高熱が続くようなばあいには、入院が必要になるこtもあります。


基本的には1歳から予防接種を受けることが来ますが、有効しているようであれば、それ以前に設けられるので、医師と相談してみましょう。
水疱瘡は予防接種をしてもかかることがありますし、全ワクチンの効果も一生続くものではありませんので、2〜3年したら再度接種することを考えてみてもいいでしょう。

予防接種の注意

これらの予防接種は、接種時期が重なるからといって、異なる予防接種をまとめて行うことはできません。
様々な薬を一度に飲むことが危険なように、予防接種も一度にはできないのです。


ある程度期間が重なるばあいには、何の予防接種をいつしたか、その都度きちんと記録し、医師に相談の上、次の予防接種を行うようにしましょう。


予防接種の日にちや期間が指定されているからといって、誰でも受けられるというわけではありません。
発熱や急性疾患が認められるばあいにはもちろんできませんし、湿疹や下痢がある場合も種類によって受けることができません。


また心臓血管系、腎臓、肝臓、血液などの疾患や発育障害がある場合にも注意が必要なので、その旨きちんと医師に伝えるようにしましょう。
アレルギー体質のある子供は、予防接種に含まれる成分により反応が出ることがありますので、かかりつけの医師に相談しましょう。

予防接種は病原体の細菌やウイルスを弱めて軽く感染させ、免疫を作るものです。
そのため、接種した日は激しい運動は避けるようにしましょう。


以前は接種当日の入浴は禁止されていましたが、最近では接種一時間後以降なら入浴ができるようになっています。
昔は、はしかで命を落とすということも起きましたが、今では栄養や環境が整い、はしかで死亡に至ることはほとんどありません。


しかし、予防接種が必要な病気というのはそれだけで怖い病気ということですから、軽く考えたり、侮ってはいけません。
また、感染症は自分の子供だけでなく、他の子供に映す伝染す可能性のあるものです。
自分の子供の健康を守り、周囲に写さない伝染さないという社会的な責任の上でも、予防接種は積極的に受けるようにしましょう。